配信開始されるや、「マジで面白い」と世界中で話題になった最注目のドラマ、それが『ザ・ボーイズ』だ。ただし、最初に断っておくが本作は本気で過激。軽い気持ちで観るとぶっ飛ばされてしまうだろう。しかしその分、他の作品にはない危険で病みつきになるエネルギーがみなぎっている。
本作は、一言で言うと復讐劇だ。スーパーヒーローが職業として存在する世界。主人公の青年は、公務中のヒーローに恋人を殺されてしまう。業務上過失致死として処理されてしまった恋人の死。金で解決しようとするヒーロー側。抜け殻のようになった青年は、ある日謎の男に「ヒーローに復讐をしないか?」と持ち掛けられる。その日を境に、青年の運命は大きく変わっていくのだった……。
マーベルやDCといったヒーロー作品が映像界で猛威を振るっている中、アンチテーゼとしてのヒーロー作品は多い。映画でいえば『ミスター・ガラス』や『ブライトバーン』がそうだし、『僕のヒーローアカデミア』にもそういった側面はある。ただ、本作ほどスキャンダラスにヒーロー社会の闇を描いた作品は今までなかった。これはつまり、ヒーロー社会が「前提」として刷り込まれているからこそできる芸当であり、アベンジャーズやジャスティス・リーグを踏みつけにして作られた「神をも恐れぬ」作品でもある。
では、具体的に何が過激なのかを書いていこう。まずは単純に、描写とテーマだ。『ザ・ボーイズ』はヒーロー側とヴィラン側の2つの視点で描かれており、前述の青年と新米のヒーローの女性の苦難が描かれる。
青年サイドであれば、冒頭数分で恋人が肉塊と化す。繋いでいた手以外は弾け飛び、彼は血まみれになる。ヒーローサイドであれば、憧れのヒーロー集団「セブン」に入った初日に、先輩に性行為を強要される。その後も脳みそがはじけ飛んだり、バラバラ死体が出てきたり、激しいセックスシーンがあったり、成人指定のドラマだけあってモラル的にもヤバい描写のオンパレードだ。
次に、ストーリー。描写やテーマとも結びつくのだが、余裕でこっちの予想を超えてくる。ここでいう「予想超え」とは、「流石にこれはやらないだろう」という忖度や自主規制的なものをなぎ倒してくるということ。このドラマの中には、ルールがない。ヒーローがセックス中に相手の頭を砕き、脳みそがどろりとあふれるドラマなんて、過去にあっただろうか? 「主人公のヒーローへの復讐は成功するのか?」や「ヒーローたちが隠す秘密とは何なのか?」といったぐいぐいと引っ張ってくれるトピックはあれど、これほど攻めたドラマは前例がない。
そして、現実とのリンク。描かれているのはヒーロー社会だが、これは芸能界に入った新人を待つ過酷な状況とか、権力を振りかざす理不尽な奴らに牛耳られる社会構造とか、現実の諸問題のメタファーでもある。つまり、他人事に終わらないエグ味が常にあり、傍観することが許されないのだ。
気軽には薦められないが、「ここまで描ける時代になった」という意味でも、エポック・メイキングな傑作である。