(私の中での)摩訶不思議ドラマこと『ニッポンノワール』が、ついに最終回を迎えた。
人気ドラマ『3年A組』(以下『3A』)の半年後の世界を描いた今作。初回放送直後から考察専用アカウントが続々と誕生し、『3A』人気の根強さを改めて感じていた。当初は「碓井班長(広末涼子)を殺したのは誰なのか」「十億円強奪事件の黒幕は誰なのか」の謎に迫っていたが、中盤からは「ガスマスク男の正体」が最大の謎とされていたように思う。序盤から熱心に考察していた人たちも、まさか人体実験の話だとは思わなかっただろう。
全話見終わったので、改めて言いたい。実にひっちゃかめっちゃかな脚本だった。
サスペンスだと思っていた物語は、「人体実験で生まれたバケモノvsバケモノの世紀の大決戦」で最終局面を迎えた。引っ張りまくった「ガスマスク男の正体」と「二つの事件の動機」も(一応)明らかにされている。しかし蓋を開けてみると、「目障りだったから殺した」と何とも拍子抜けな事件の真相だった。『3A』から恒例のお説教タイムも健在。ピキ…ピキィと音を立てながら覚醒モードに入った清春は、憎き真犯人にド正論をぶちかます。怒りと力が頂点に達した清春の顔は、白菜の菜っ葉を彷彿させる見た目になってしまい、気持ち悪さと恥ずかしさから直視することが出来なかった。
怒涛の中二病展開ばかりに目に付いてしまったが、最終回は、今まで以上に『3A』カラーが色濃く出た。『3A』に登場したSNS「マインドボイス」で全世界に向けて妖怪大戦争を配信し、『3A』の元生徒たちが拡散するおかげで、悪の組織「ニッポンノワール」の存在が明るみになる。実は生きていた才門が、『3A』の先生(菅田将暉)の言葉を聞いて心の変化があった…と語り始めたときは、思わず「マジかよ」と声が出た。
いっそのこと、『3A』の続編(もしくはスピンオフ作品)として、huluで配信すればよかったのに。内容の良い・悪いとは関係なく、「大好きな『3A』の世界が続いていること自体が嬉しい」と思うファンもいるだろう。少なくとも地上に出しちゃいけなかった。最初から最後まで、脚本家がただ気持ち良くなるためだけに作られた、脚本家本位の作品に見えて仕方なかったのである。
妖怪大戦争から無事に帰還した清春は、咲良と共に克喜の誕生日を祝う。エンディング映像のみの「笑えねえ」最期には呆然。流れるように日テレ恒例のhulu誘導タイムに入ったが、特に気になることもなかった私は、hulu商法に怒る気持ちも湧かなかった。平均視聴率6.7%の今作が“8.1%”で幕を閉じたのは、有終の美と言えるだろう。しかし、なによりも数字重視だった(と思う)番組スタッフ的には、なにか思うことがあったはずだ。熱を帯びていた過剰な『3A』信仰も、少しは穏やかになってくれるかもしれない。