ストーリーがすごいというドラマではない。
目標もなければ試練も困難もない。
対立も策略もなく、謎もなく、過去もなく、もちろん危機もない。
それでもこんなに素晴らしいドラマができる。
食べてくれる人を想い、作ってくれた人を想う。
そしておいしいという言葉や表情とともに、感謝と幸せが溢れてくる。
ストーリーよりもテーマを大切して作られたドラマだと思う。
そのテーマや素材を活かすのは料理もドラマ・映画も同じ。
料理がとても美味しそうに見えるのはもちろん、キャストの魅力も最大限に引き出している演出、特に撮影・照明が素晴らしい。
雨の日でも夕暮れ時でも少女たちの美しさをしっかりと捉えている。
巷では気軽に「映える」とやるのが流行りだが、これはそんな気軽なものではなく、真剣勝負の技術なのだと思う。
これほどまでに素晴らしいものを作るには、技術も大切だが想いも大切。
製作陣の想いは、今回のサチの自分が撮った写真への想い、そしてアヤリの料理への想いに表れているのではないかと思う。
良いものを届けたいという想いが伝わってくるドラマである。
今期は1時間枠のドラマが不作に思える。
いろいろな要素を詰め込み、謎が謎を呼んでカオス化し、結局穴だらけの雑な作りのドラマもある。
極端な性格のキャラクターが正論を吐いたら刺さるでしょう、当たり前のことでも熱く語れば視聴者は感動するでしょうという計算は、見下しと押し付けでしかないが、それらがさもありがたいように描かれる。
視聴者つまり視聴率という数字を次週に引っ張ろうという意識は見えるが、それで上質なドラマができるとは限らない。
届けたいという想いと引っ張ろうという意識は全く違うものを生み出すのだろう。
そんな中でこのドラマと、やはり30分枠の「おいしい給食」は秀逸で、今後のドラマの可能性を示し、今期のドラマの救いとなった。
製作陣には感謝と敬意、そして今後の期待を表したい。