1話完結・約30分というちょうど良い時間にもかかわらず、全8話全てで泣かされる最強コスパドラマ。それが、Amazonプライム・ビデオで配信中の『モダン・ラブ』だ。
ニューヨーク・タイムズのコラムを基にした本作は、毎話さまざまな事情を抱えた人々が愛に出会う物語。魅力をざっと箇条書きすると
①見やすくお手軽
②とにかく泣けて心温まる
③キャスト・スタッフが豪華
④画面の全てがお洒落
のようなポイントが挙げられる。
①に関しては、冒頭で述べたように「毎話完結」「1話約30分」「設定が分かりやすい」「全話ラブストーリー」という設計が非常に親切。
ご飯を食べながらでも気軽に観られる(顔は涙でぐちょぐちょになるが)。
続いて、②。本作品の素晴らしさは「愛があふれている」点にある。どの話も、誰かが嫌な気持ちになることがないように丁寧に心配りがされている。
ドアマンと女性の話、デートアプリの開発者と記者の話、ある秘密を抱えた女性の話、同性愛者のカップルの話……それぞれの立場や境遇は違えど、皆共通して「愛」を求め、惑い、救われている。ほろ苦さも含めて、「彼らを幸せにしたい」という意識が流れているため、安心して観られる。(イメージ的には『ラブ・アクチュアリー』が近い)
彼らに共感できるのはもちろん、役者陣の圧倒的な表現力と監督陣の優しい演出を浴びれば号泣は必然。
圧巻なのは第3話のアン・ハサウェイで、彼女の「泣き」の演技はオスカー級だ。『レ・ミゼラブル』を彷彿させる、観る者の感情を引きずり出す「涙が溢れて止まらない」シーンは必見。
他にも、『LION』のデヴ・パテル、『SHERLOCK』のアンドリュー・スコット、『レディ・プレイヤー1』のオリヴィア・クック、アンディ・ガルシア、『キングスマン』のソフィア・ブテラにエド・シーランまで。上に挙げたメンバー以外にも、洋画好きなら「おおっ」となるキャストが揃っている。
彼らをまとめ上げるのは、『はじまりのうた』『シング・ストリート』のジョン・カーニー監督率いる演出チーム。基本、シンプルな対話劇なのだが撮り方、テンポ、セリフ等々、クスッと笑わせるような要素を絡めつつ、要所要所の「魅せる」シーンでは音楽のボリュームを上げ、ドラマティックに仕上げている。そのため、観る者の感情のトーンが作品と同系色に染め上げられ、観ているだけで涙が止まらなくなったり、微笑んでしまったりする。
観る者の目を楽しませるのは、上に挙げたものばかりではない。④のセンスの良さも重要なファクターだ。
それぞれの住居、小物はもとより、ニューヨークの名スポットから隠れたお店まで、街並みがひとりの「登場人物」として存在感を放っており、心を満たしてくれる。そして滅茶苦茶ニューヨークに行きたくなる。
良いドラマはこの世に多くあるが、「心が豊かになる」ドラマはなかなかない。「愛をくれる」ドラマもだ。
しかも見やすく、短時間。なのに記憶に刻まれるほどの感慨を得られる。
まるで奇跡のような一作だ。未見の方は、ぜひ試していただきたい。