Netflix限定作品の中で最も好きな作品。揺るがない。
スパークスの解散ライブの漫才で号泣。
漫才師を目指したことないから普通ならその人たちの生活はわからないはずなのに、今作はその漫才の世界の現実を突き詰めているような感じがして、感情移入しまくれた。
本作の見どころは、どこまでも自らのおもしろい漫才を突き詰めていこうとすればするほどに、現実の多数派のお客さんとズレが生まれて、自らの漫才と世間の求めている漫才にギャップが生まれて、どちらを選択するか、どう折り合いをつけていくのかの葛藤、さらには理想と現実のギャップに悩まされ、苦しむ姿やそんな状態の人間そのものがリアルに描かれているところである。
お笑いや漫才に対しての信念が強ければ強いほど、世間一般のおもしろいと折り合いをつけることができずに、チャンスを逃してしまう場面が多々あるし、それが続くことで誤った方向に舵を切ろうとしてしまうシーンもある。
さらに、後輩や弟子と可愛がってた人たちの方が、いわゆる売れっ子状態になっていくときのもやもやした感情までもがしっかりと描かれていて、約450分で漫才師の生活の一端を体験できた感じがした。
そして、あほんだらの漫才、やり方を見ているうちに思い浮かんだのはジャルジャルの漫才だった。
そもそもM-1決勝にいける時点ですごいわけやけど、彼らなりには本当はもっと振り切った漫才がしたいんじゃないか、とどうしても思ってしまう。
そう考えると、M-1のときみたく、世間のおもしろいと自らの追求するおもしろいをあれだけ折り合いをつけながら、さらっとやってのけるのはさらにすごいことなんじゃないかなと。
売れたいと思いながら漫才をしていたスパークスも売れてくることによって、世間のおもしろいと自らが追求したいおもしろいの間の葛藤に悩まされる。
有名になっていけばいくほど、夢や理想が大きくなっていき(更新されていき)、良くも悪くも初心を忘れていき、コンビ間でも歪みが生まれるようになっていく。
そして、自分たちのやりたかった漫才がわからなくなる悪循環に陥っていく。
決して簡単なサクセスストーリーを描くのではなく、リアルな人間臭さまでもを感じられる緻密な構成に感動が止まらなかった。
漫才の掛け合いやネタ合わせの部分もしっかり見れて大満足。
最後、徳永と神谷が結局コンビを組まずに終わった感じもよかったし、誰よりも自由に楽しそうに生きていた神谷の弱さが終盤になるにつれて露わになっていく展開もすごくよかった。
自身でおもしろいと思ったことが、意識を全くせずとも、差別に繋がることもあるから、時代の流れと捉えられ方までちゃんと考えないといけない。
それら全てを踏まえてラストに「生きている限り、バッドエンドはない」という前向きな締め方。
1つ夢が途絶えてしまったとしても、また新しい道で新たな夢とやりたいことに出会えるはずだから、前向きに生きようというメッセージ性を感じた。
そして、キャスティングとキャストの演技が素晴らしすぎた。
林遣都、波岡一喜、門脇麦、高橋メアリージュン、田口トモロヲ、好井まさお、とろサーモン村田など…。
林遣都、波岡一喜は、まるで漫才師の彼らの状況を俳優に置き換えたような感じだし、好井まさお、とろサーモン村田なんかは、役とまさに同じような状況下なんじゃないかと思われる。
門脇麦、高橋メアリージュンもハマりすぎてた。