今よりも多様性が重んじられておらずに、世間からの常識で正しい正しくないが判断され、後者においての風当たりが強い中、本作の取り上げる領域においては非常によくないレッテルを貼られている業界であることがわかる。
今よりも何もかもが認められてなかった。
世間の風当たりも強く、でも人間として無視できない欲求で、そこをさらけ出せる場がないのをおかしい、変えたいと思う人がいなければその世界が開かれることはなかった。
それを成したのが村西とおるであった。
何かを変革することができる、時代の中で何かを新しく作り上げることができるのはこういう人なのかというのがよくわかった。
正直やり方がどうとか進め方がどうとかビジネスを進める上での突っ込みどころは多々ある。
それでもポイントでは絶対に外さない嗅覚と並外れたこの業界への想いと覚悟、そして信念が半端なものじゃない。
そこに恥じらいなんてものは全くなく、とことんにまで世間ではなく自分を生きているからこそ成し得た偉業であると思う。
現に今はAV女優を能動的に目指す人も増えてきていて、どんどんよい方向に向かって来ている感じがする。
その突破口となったのは、間違いなく性(エロ)を人間に必要不可欠なものとして、一つの健全なビジネスの礎を築いたからではないかと。
そこに至るまでの険しい道のりをしっかりと見せてくれてるのが本作。
これは何か今までにはない革新的なことをしようとするときに来る反対勢の風当たりを真っ向から受けつつも、正当な自分たちのやり方や創り上げたいものを信じて突っ走ったからこそ成し遂げられたことがわかった。
でも忘れていけないことは、あくまで出演者ファーストを徹底すること。
無理やりや騙してとか脅してとかそういう本人の意思に反したやり方だけは絶対に許されるべきじゃない。
まあそれは他の仕事でも変わらない。
そうでなければむしろその選択をするのは本人の自由であるし、他の仕事を選択することと変わらないだろう。
とにかく熱量が凄く、物語もずっと激しく動いているので飽きが来ない。
普通ならばどこかで諦めるであろうところを諦めずに試行錯誤して続けないと道は切り拓けないんだなと。
カリスマというのは、どれだけ好きなこと、やりたいこと、成し遂げたいことに一直線になれるかとそこに同じ想いの仲間ができるかに比例しているんじゃないかと。
この時代の特にこの業界の闇社会との切っても切れない感じとか裏切りが横行する感じはかなり恐ろしかった。
こんなステークホルダーと痺れをきらしながらとなると、正直自分には乗り越えられる自信がない。
出会いや仲間に恵まれたからこそ、偉業を成し遂げられたこともしっかりと描かれていてよかった。
この題材でここまで熱くなって、泣けるとは思わなかった。
最後のトシ、切なすぎる。
P.S.
キャスト最高でした。
山田孝之は本当にどこまで幅広く演じられるんだというほどの完璧な演技。
満島真之介に関しては、今まで観た演技の中でベストアクトだと思った。凄い!
玉山鉄二もまさかのハマる。
イケメンが振り切れる瞬間はよりかっこいい。
あとは何と言っても黒木香を演じた森田望智。
本作で一番の輝きと美しさとミステリアスさを兼ね備えた天才的な演技。
体当たりの演技とはまさにこのこと!
その他、柄本時生、伊藤沙莉、冨手麻妙、リリーフランキー、國村隼、石橋凌、ピエール瀧など、かなりリッチな布陣でこの世界が見事に映し出されていた。