初回は必ずリアルタイムで見ようと心に決めていたものの、ギリギリの7時58分に目が覚めた。布団に入ったままテレビをつけると、高瀬アナが「お気づきでしょうがまだ私は『エール』を引きずっていますよ……!」と急ぎ足で喋っている。しかし、それでも始まるのが朝ドラだ。『エール』は(なぜか)原始時代から始まったが、『おちょやん』は景気の良い口上での幕開けだった。杉咲花ちゃんの声が爽やかで愛らしい。その後に流れた『泣き笑いのエピソード』がアルプスの天然水のように瑞々しく、良い一日を過ごせそうな予感がした。(すぐに二度寝したけど)
私の朝ドラ視聴は『まんぷく』から始まり、今回の『おちょやん』で5作目になる。よく議論される「東京」「大阪」の違いも何となく分かるようになってきて、今回の『おちょやん』はコッテコテの大阪放送局制作だと素人ながらに思った。トータス松本演じる父は、大阪放送局お馴染みの体たらくな父親だ。しかも声が通るから余計にダメさが際立つ。
そんなダメな父親と小さな弟を支えているのが、主人公の千代だ。顔の系統は杉咲花ちゃんと異なるものの、ま~~~~~~毎田暖乃ちゃんの演技が上手い。大人相手にめちゃくちゃ捲し立てながら、アドリブで蹴りまで入れるのだから何とも頼もしい。どんな苦境でも跳ね返しそうな芯の強さを早々に感じる。
しかし、そんな千代もやっぱり小さな子どもなんですよ……。ダメ父親の行方が分からず、同級生からは「シラミが沸いてる」と罵られ、弟からは「姉やんはお母ちゃんやない」と言われた夜、千代は一人で亡き母親との思い出の場所へ向かう。そして母親から貰ったビー玉を手に、「明日は晴れやな……」と小さく笑うのだ。でも、その頬には一筋の涙が伝っていて、ち、ち、千代~~~~~!!!!!!幸せになれ~~~~!!!!
ここで千代が「こんな家抜け出してやる」とか「いつか幸せになったるで~~!」ならまだしも、ここで言うのが「明日は晴れやな……」なのである。つまり千代は、“ここで生きていかなくてはいけない”ことを、子供ながらに理解しているのだ。まだ見ぬ未来へ願いを託すことなく、置かれた場所で咲く覚悟を決めている小さな千代に胸が苦しくなった。
リアルタイムで見ていた時は「秦基博の曲いいな~」くらいしか思わなかったが、意識がハッキリした状態で見ると“令和のおしん”状態の千代に、何ともいたたまれない気持ちになってくる。成長した杉咲花ちゃんは成功するのだろうが、それでも子供時代の時に一度は報われてほしいと思う。子役ターンは2週間らしい。その間に毎田暖乃ちゃんの屈託のない笑顔が見れることを願う。