回想ではなく、恒星さんのお兄さんが登場しました。
2人が仲良くゲームで遊ぶ子供時代と、面と向かって昔のことで文句を言い合う場面、
そして、取り壊された生まれ育った実家の写真を見て、バスの中で静かに泣く場面は、
なかなか良かったと思います。

しかし、それらはドラマのなかでどれほど重要な場面なのでしょうか。
恒星さんの実家の福島で、お兄さんが後を継いだ家業を廃業せざるを得なくなり、
住めなくなった実家を取り壊すことになったのは、直接言及されてはいませんでしたが、
間違いなく東日本大震災と原発事故のせいでしょう。
以前、お兄さんの登場する回想場面で、「あんなことがなければ…」と匂わせていた「あんなこと」が、
誰もが知っている、現実に起きたことだということに安易さを感じます。

しかも、前回までのこのドラマは、モラハラ気味の社長と仕事をしない同僚や後輩などとの仕事、
元カノときっぱり別れられず、たまたま知り合った女とも寝てしまうフラフラした彼氏との足踏み状態の恋愛、
晶を取り巻く、この2つの場面での人間関係がベースになっていたと思います。
そのなかにも、自分にはどうもできない、誰も責められない、という晶の葛藤がありましたが、
自然災害や、それによって起きた事故とつなげるのは、安易を通り越して無神経ではないでしょうか。

出来事には、常に様々な立場の人がいて、それぞれの立場で出来事に関わっています。
それら全ての人の立場を尊重していたら、身動きが取れなくなるのは当然、
全ての立場を蹴散らす獣になるか、ものも言えなくなるかのどちらかしかありません。
それだけを伝えたいなら、このドラマはあまりにも大仰でもったいぶりすぎ、
もっと単純な方が、面白いドラマになったはずです。