記憶捜査という聞きなれない刑事ドラマに、記憶だけで捜査とは、内容的に、どーなの？と思った。ところが主人公の鬼塚役が北大路欣也というだけで存在感２００％、車椅子に座っているだけで、動かなくても、眼力と表情だけで十分、視聴者のハートに演技が刺さってくる。
豊富な捜査経験と裏通り、路地まで地域の歴史を知り尽くしている鬼塚ならではの記憶力のみならず、想像力、洞察力に頭が下がる。
特に、3話では新宿ゴールデン街が舞台ですが、ゴールデン街の飲食店の詳細を熟知し、須賀神社と花園神社の階段の形状まで記憶していて、真犯人がついた嘘を見抜いた眼力は見事だった。
そして、ドラマの最後の鬼塚の決め言葉には、人生の教訓となる諫めがある。
特に3話では、働き方改革で夫の残業代が減って収入が減った主婦の小笠原が、子供の塾代稼ぎに、荷物を受け取るだけで収入が得られるバイトに手をだしたのが罠で個人情報を悪用され犯罪の主犯として容疑者になってしまうのを鬼塚らが小笠原の無実を証明して解決する。そうすると妻をなじる夫に、鬼塚は妻を慰めつつ、お互いを信頼して会話をしなければいけない、と壊れそうな関係を修復させた言葉は人生の機知に富んだものだった。