コロナ禍の下、すっかり口コミをご無沙汰してしまいましたが、また頑張ってドラマの良さを語るべく書かせて頂いていきたいと思います。
口コミ復活第1弾で語りたいのは、名作「深夜食堂」。
TBSの「ドラマイズム」枠(火曜深夜1:28~)も新作ではなく過去の作品の放送が開始され、19日(火)深夜には第1部・第1話「赤いウィンナーと卵焼き」が、次の週には2話の「猫まんま」が放送されました。
このまましばらく、順番に放送を続けていくのかな?
本放送は、2009年10月。
それから約11年経っておりますが、感動は全く色褪せませんでした。
レギュラー出演は、主演の小林薫さんただ1人。
新宿の裏路地(ゴールデン街辺りの設定です)にある深夜0時から朝までやっている「めしや」を舞台に、そのマスターとお客さんたちの交流を描くドラマ。
営業時間からして、お客は夜の世界の人たちや、ちょっと訳アリな人たちが多いお店。
その人たちとマスターとの、時にはホッコリ、時には切ないドラマです。
常連客役には綾田俊樹さん、不破万作さん、安藤玉恵さん、宇野祥平さん、オダギリジョーさんなど実力派がズラっ!
第1話は、同じく常連客となる松重豊さんが演じるヤクザの剣崎竜との出会いのストーリー。
もう自分は何回か観たのですが、改めてジーンと来てしまいました。
まず、松重豊さんのヤクザ役が激シブでカッコ良くてため息。
そうそう。昔の松重さんって、強面で長身でこういう役が多かったし、こういうイメージだったよなぁと思い出します。
この第1話は、まだ「孤独のグルメ」の前の放送だったので。(「孤独のグルメ」は、2012年放送開始です。)
それがいつの間にか可愛い演技派のおじさん俳優というイメージに変わり、今じゃ猫だ・・・(爆笑)
自分が初めて松重さんを舞台で観た時は、オカマ役(1993年「トランス」青山円形劇場)だったので、ヤクザでも猫でもあまり驚きませんが・・・。ようするに、とても役の幅が広い役者さんだということですよね。
「めしや」のメニューは豚汁定食と、後は飲み物だけ。しかもお酒は1人3杯まで。
でも、言われればできるものは何でも作るというお店です。
ある日店へやってきた竜と手下のゲン(山中崇さん)は、第一印象は最悪。
他の客が怖がって帰ってしまいます。
無理難題を言ってくるゲンに、マスターがそっと包丁を隠し持ったのを見た竜が「赤いウィンナーあるか?」と一言発し、マスターは竜にタコさんウィンナーを作って出してあげます。
それ以来、竜はしばしばお店に通うようになりました。
常連客の1人で、二丁目のゲイバーのベテランママ・小鈴(綾田俊樹さん)が、無口な竜に心惹かれて・・・というお話し。
とにかく、静かなドラマで、台詞とかではなく役者陣の見事な行間の演技を極限に生かした素晴らしい雰囲気。
場所がら、大きな荷物を背負っている人が登場人物には多いのですが、それぞれが背中の表情ですらその人物を演じているのにひたすら唸るしかないです。
ああ、いい演技だ。
ああ、いい演出だ。
マスターの後ろ姿、小鈴が店から出て行く時の歩き方、竜の無表情な立ち姿・・・。
どれをとっても役者の鑑と言えるほどの全身を使った繊細な演技。
これをテレビで観られちゃうんだからお徳すぎます。
そういった名演技を余すところなく見せてくれる演出も、また素敵です。
第2話では、朝マスターが店を閉めようとした時にフラっと現れて、かつおぶしを乗せただけのご飯にしょう油をかけた「猫まんま」を注文した売れない演歌歌手の千鳥みゆき(田畑智子さん)のお話し。
歌が大好きだけどまったく売れず、出したレコードは1枚だけ。
それでも歌い続けているみゆきを、実は「猫まんま」好きなマスターは応援してあげようとします。
そこで店の常連客である作詞家(田口トモロヲ)をみゆきに紹介し、できあがった「まよい猫」という曲が大ヒット。
一躍みゆきは時の人に。
しかし・・・。
ただ歌が好きで一生懸命歌い続けていたみゆきを襲った悲劇に、何度も観ているはずなのにまた涙してしまいました。
ここでも多くは語られません。
視聴者の想像や感受性に託されているドラマです。
どうして?なんで?
そういうことではなく、視聴者それぞれも自分の人生と重ね合わせたりして好きなように浸れるドラマ。
ラストで、フラっと現れた猫にかつおぶしをあげて「みゆきちゃん」とマスターが語りかけると「ニャー」と返事をする猫さん。
それだけで、もう・・・(泣)
今では深夜ドラマも以前よりかなり注目されるようになり、むしろ深夜の方が名作が隠れていたりすると認識されるようにもなりました。
でも、「深夜食堂」が放送開始した頃はまだそれほど深夜ドラマにスポットが当たっていた訳ではなく、むしろGP帯ではあまり放送できないような「エロ」「グロ」が多かったようなイメージでした。
そんな中での「深夜食堂」の放送は、自分にも世間にもセンセーショナル。
「孤独のグルメ」よりも前に、深夜の飯テロドラマとして存在していたのですから、さすが。
『食』は万国共通なのか、やはり「孤独のグルメ」同様に海外でも人気を博して中国や韓国でリメイクされたりミュージカル化・映画化もされています。
自分に「これからは、深夜ドラマの時代になる」と思わせてくれた名作の再放送。
もし、まだ御覧になっていない方は是非に。
ただし、なるべく録画視聴でも深めの時間帯に観ることをオススメします。
その方が、より味わい深く感じられるかと。
観ると小腹が空くかもしれないことも、お忘れなく。
泣くか、食べるか、どちらかは覚悟しておいてください(笑)