『ボーン』シリーズは、ゼロ年代のアクション映画に変革を起こした存在だ。徹底的なリアル志向に振り切り、「その場のものを武器にする」戦闘スタイルや、あえて狭い場所での肉弾戦を設定。かと思えばパルクール的アクロバティックなアクションも導入。
これまでにあった「魅せる」偏向のアクション映画とは一線を画したスタイルは、今もなお連綿と受け継がれている。『007』などもこの系譜にあるし、『キャプテン・アメリカ』のバトルシーンにもその影響が見られる。
同時に、本作は「記憶喪失」がテーマになっていて、自分が何者か=アイデンティティを探す、というのが重要だった。リアルなアクションと無くした記...
『ボーン』シリーズは、ゼロ年代のアクション映画に変革を起こした存在だ。徹底的なリアル志向に振り切り、「その場のものを武器にする」戦闘スタイルや、あえて狭い場所での肉弾戦を設定。かと思えばパルクール的アクロバティックなアクションも導入。
これまでにあった「魅せる」偏向のアクション映画とは一線を画したスタイルは、今もなお連綿と受け継がれている。『007』などもこの系譜にあるし、『キャプテン・アメリカ』のバトルシーンにもその影響が見られる。
同時に、本作は「記憶喪失」がテーマになっていて、自分が何者か=アイデンティティを探す、というのが重要だった。リアルなアクションと無くした記憶を巡るサスペンス要素、この2つの面白さを引き継いだドラマが、『トレッドストーン』だ。
本作は、『ボーン』シリーズの主人公が巻き込まれたCIAの人間兵器の作成プログラムを題材にしている。その名もトレッドストーン作戦。これが再始動したことで、新たな事件が世界で頻繁する、という物語だ。
興味深いのは、第一話の時点で『ボーン』シリーズの面白さが凝縮されている点。北朝鮮の主婦やアラスカの作業員など、ごく普通の人々(ただし過去の記憶がない)が、失われた記憶を掘り起こされることで最強兵士へと覚醒していく。さっきまで市井の人々だったのに、急に激しいアクションをこなせちゃうところとか、ギャップがまさに『ボーン』シリーズだし、世界各地を舞台にしているところもそう。スリリングなテンポや、追い立てるようなカメラワークもシリーズの「らしさ」がちゃんと出ている。
『ボーン』シリーズが大好きなだけに、どう繋ぐのか気がかりではあったのだけど、これは確かにファン心理をついた作品になっていると感じた。