今回は、サイドストーリーに泣けた。
鬼渡で有名な中田喜子さん演じる熟女ホステスのエリー。
彼女は、若いときに結婚詐欺に合い、全財産を失った。
その詐欺師と40年ぶりに再会(たまたま同じ団地に引っ越して来た)。
もちろんこの詐欺師の男性も、もう、おじいさん。
この詐欺師のキャスティングが絶妙で憎くて、
あぁこの人、若いときはイケメンだったろうなという俳優さんを起用してるとこ。
結婚詐欺師がイケメンで老けたという鉄板な設定がおもしろかった。
この詐欺師はこともあろうに、またエリーに近づいて、やり直そうとか言い始める。
手を握り、瞳を見つめる。動揺するエリー。
でも周囲の方がやはり冷静で、ママなどから「忘れなさい」といさめられる。
という展開。
一見ありがちなんですが、ちょっと違う。何がというと、このエリーたちの年齢。
もう70歳前の女性たちなのである。
エリーは頭で分かってても葛藤する。そして新(池脇千鶴)を誘って飲む。
そこで酔った勢いで本音を吐露。
「私だって本当は分かってるの。でも、でも、もしかしたら、あの人、
私のことをまだ好きでいてくれてるんじゃないかって……」と泣く。
せつない……。
年齢から考えても恋愛のチャンスなんてほとんどない。
彼女たちもまたマイノリティーなのだ。
目の前に来た一瞬の恋心にかけるしかなくなる……。
しかも40年前は本気で好きだった人。
実家の全財産を失うほとひどいことをされた相手なのに、それでも
詐欺自体が何か特別な事情があったのかも、とまだ信頼しようとする。
※最後は決定的なことが起きてこの詐欺師は警察に捕まります。
ここの、新のアパートの小さな部屋で泣き崩れる中田喜子さんの演技が
半端なかった。キャリアウーマンや良き母のイメージが強い女優さんだが、
本気で「女」を演じたらこうなるんだと、改めてベテラン女優さんのすごさを
感じました。
花魁とかやって欲しかったな、ここまで哀しさを表現できるなら。
中田喜子さんは美しい顔立ちで、ホームドラマ寄りになった女優さんですが、
汚れ役の方が凄まじい。まだまだいろんな役を演じて欲しい。
そしてドラマは一転、アラフォー問題に突入。
出向で条件の悪い職場(倉庫管理)に追いやられて来た社員は文句を並べるが、
ヤンキー上がりで社員の立場そしてチームリーダーの役職までを勝ち取った
社員(江口のりこ)から、正社員として働けるだけでも感謝しな、と言われる。
非正規雇用の多い職場で正社員はごくわずか。
社会から守られていることも多い社員だから、ありがたいと思わないと、と。
主人公含め、この周囲の社員の設定がみんなアラフォーなんですね。
それぞれいろんなものを抱え、乗り越えて、あるいはひきずったまま
不景気の氷河期からスタートして、いつの間にかアラフォーになっちゃった。
だとしても、今、目の前の仕事に感謝しないといけないというメッセージ。
これは響きました。じわっと目頭が熱くなりました。
うんうんと頷いていました、思わず。
その中でも、副業で安心と充実を得ている新だけが表情が良くなるのです。
最初は周囲が「ホストクラブにはまっている」と勘違いしていたのですが、
どうしてどうして、新は熟女バーで一番若いホステスとして収入を得ているのです。
ホステスとして初めての給料で、おしゃれな服、靴を買い、メイクまでちゃんとするようになった新。
だんだん女性としての楽しさを実感する新。
でも、3話のラストでは本業で「リストラ」の話が出て・・・
と次回につながるという巧さ。
このドラマは、ただのホステスものではありません。
ホステスは主人公の「副業」なんです。
主人公の主軸は、アラフォー、正社員でもやりがいない仕事に安月給。
でも生きていくしかない。
ここにフォーカスされています。
社会の弱者がどう日々と戦って生き抜いていくか。
熟女バーで働く人たちも客として集まる人たちもいろいろ抱えてそうです。
このバーを社会の縮図として描いているような気がします。
まーとにかく池脇千鶴はじめ、上手い女優さんばかりのドラマ。
この方々だからこそ、こんなに集中して観てしまうんだと思います。
ひとつの台詞、表情、どれをとっても「実感」と「心」がこもってる。
新が「縮図」に飛び込み、そこで活躍し、また朝になったら現実に飛び出して、
自分の生きる糧にも変えていく。
そのたくましさを見守りたいと思いました。