中村倫也さん主演ドラマ『珈琲いかがでしょう』が、4月から放送開始される。『凪のお暇』の原作者コナリミサトさんの同名漫画の実写化ということで、ファン的には嬉しいところ。そもそもこの原作、主人公のビジュアルがガチで中村さんに似ており、「実写化したらぜひ倫也さんに」と思っていた方も多いのではないか（かくいう自分もその一人だ）。

映画に舞台にCMに、エッセイ本も出して、ここ数年の勢いがとんでもないことになっている中村さん。彼×テレビドラマで個人的に外せないと思うのは、やはり『闇金ウシジマくん Season3』だ。

本シリーズは、法外な利息を吹っ掛ける闇金業者・ウシジマ（山田孝之さん）と、闇金にハマって人生を棒に振る債務者、あるいは彼らをカモにする悪人たちを描いたハードなサスペンス群像劇。映画版も合わせれば、林遣都さんや菅田将暉さん、窪田正孝さんといった様々な若手実力派が抜てきされ、極限演技を披露してきた。このシリーズに出演した中村さんは、原作でいうところの「洗脳くん」パートを任された。彼が演じたのは、結婚詐欺師。

映画やドラマで描かれる結婚詐欺師というと、言葉巧みに女性を魅了し、お金を巻き上げる頭脳派の犯罪者のイメージ（時として、甘めの優男）があるかと思うが、本作での中村さんはそのイメージは醸し出しつつも、はるかにサディスティックな演技を披露している。「洗脳くん」の異名通り、周囲を言葉で洗脳し、操るという相当怖い役どころなのだ。心の隙間に入り込み、陥落させ、従わせる。暴力も振るえばこき使い、「飴と鞭」の鞭の要素が9割ほどを占めている。もはや隷属に近い形で周囲を扱い、よく宣伝文句等で多用される「ドSキャラ」という言葉が軽く吹き飛ばされてしまうほどのクレイジーな悪役に扮しているのだ。タイトな白シャツを着こなし、髪形もぴっちりきっちり固めた異様な雰囲気。優しげな声を出したかと思えば、いきなり怒声を浴びせて恫喝する。外見がいかに魅力的であっても、絶対に会いたくない狂気のキャラクターを見事に演じ切っている。

誤解を恐れずに言えば、『闇金ウシジマくん』シリーズは全てにおいてリアル重視の作品ではない。『世にも奇妙な物語』的な現実から数センチ浮いたファンタジックな恐怖、というのがふさわしい雰囲気だ。そのため、フィクションとして楽しむ向きもあるだろうが、「洗脳くん」パートにおいては、それだけではないゾッとした生々しさが付加されている。それは間違いなく中村さんの怪演の賜物だろう。

なぜいまこの作品の話をしたかというと、『珈琲いかがでしょう』で彼が演じる主人公も、陰と陽の両方のエッセンスを持つキャラクターだから。『闇金ウシジマくん』や、あるいは『孤狼の血』で見せたような暴力性が垣間見えるかもしれず、期待を寄せている。